まつりごとの話

昨日はとても暑かった。
昼前にメルカリで売れた本を出そうと
郵便局に行った時、道ですれ違ったおっさんが喚いた。
「お前らみたいなのがお祭やってるのを見ると
俺は腹が立ってしょうがねえんだよ!」とか
そんな事を言っていた。
昨日は平日でお祭などやっていなかったけど
上が鯉口シャツ、下が昔ねぷたで履いた白短パン
(彼女に言わせると襦袢)という僕の格好が
おっさんにそんな風に言わせたのかもしれない。
おっさんは特に絡んでくるわけでもなく行ってしまった。
僕もおっさんを追いかけたりはしなかった。


乱暴に言えばマトモというのは、主観的判断の集合だ。
自分の経験と、周囲の人たちの自分への「印象」から
社会的にマトモかどうか判断される。
その人の言動や行動が、今後どう変わるかはわからない
お金が全くなくなり、どうしたらいいかわからなくなったり
周囲に味方してくれる人が一人もいなくなったりして
色んな余裕がなくなったら、マトモじゃなくなるかもしれない。


自分の内面の、性癖や生理や嗜好などで言ったら
きっとマトモでない部分もたくさんあるし
他人のマトモの範囲内かなんて知った事じゃないが
表に出してしまうと社会的にはアウトということだ。
「そんなことはわかってるよ」と言われてしまうと思うが
「自分は普遍的にマトモだ」と思ってるように見える人が
世の中にはたくさんいるようで、おかしいなと思う事も多い。
「あれ、自分は今マトモではないかも」と疑っている人
疑いを持っているというのが、マトモな状態だと思う。


彼女に言わせると、外での僕の振舞いは
マトモではない人につけこまれる隙があるという。
要はトロいのだ。
彼女は近年の無差別殺人事件を連想して、
僕が巻き込まれるのではないかと心配している。
優しい人である。


でも無差別殺人をするような状態の人は
既に周囲は全て殺してもいいものとして見ているだろうし
出くわした時は皆そんなに変わらないと思う。
また自分で言うのもなんだが、
外にいる時の僕にはそんなに隙はないと思っている。
自転車か徒歩移動が殆どだが、すれ違う人が何で、どんな状態か
(年齢・性別・健康状態、動き方・進行方向・速度など。誰かは気にしない)
自分が進む地面の状態はどうか、常に意識している。
常にというのは嘘だけど、大体いつも意識はしている。
少しでも危険性を感じた時は、悟られない程度に警戒して対処を考えている
(一緒にいる彼女も気付かないくらいなので、警戒するのは上手いと思う)。
警官が、警官を警戒している人を不審者とみなすように
気づいていないフリをして目の端に入れながら移動すると
奇声をあげながら蛇行してくるやつにも警戒されない。
「ここにいてもいいんじゃないの」位の関心を示していると
まあまず問題はない。相手から見えない方を2秒くらいチラ見してやると
「お、俺に見えないとこに何かあんのか」と意識を誘導することもできる。
逆に「マトモじゃないやつだ!」とビンビンに警戒する方が
目を付けられて危ないと思っている。


若い頃さんざん酔っぱらって外を一人で徘徊しても
なんとか生き延びたのは、ただの幸運だけでなく
本能的な危機意識のおかげだと思う。
若い頃の自分の世界の狭さ、マトモじゃなさを知っているから猶更
外を歩く時に音楽を聴きながら移動するなんて、怖くてできない。
というわけで隙は無い方だと思うのだが、こういうことを書くと
「よし、じゃあ俺が試してやる」と思われたりして
危ないのかもしれない。


マトモやマトモでないや、色んな状態の人が集まる社会を
完全に治めきることなど不可能だが、それでも治めようとする人は、
最も多くの他者からマトモと認められる人物にやってもらいたいと思う。
だから選挙制度は賛成だ。内面はヘンタイでも構わない。
というかヘンタイにしかできないとすら思う。
ただ今は年代毎の人口の差が大き過ぎるので、
「持ち票数」で調整できないかなどと思う。
例えば18歳から38歳までは2票、
39歳から59歳までは1票、
60歳以上は0票で、自分の意見を反映させる為には
2票持ってる若者に働きかける。
その為には60歳以上と18歳から38歳の者が
地域で交流する習慣がなければならない。
乱暴過ぎる例である。
彼女のお父さんに怒られそうである。
でももし上の例で僕が60歳まで生きて選挙権がなくなったとしても、
年齢だけでジェノサイドされるのでなければ、まあよしとしたい。
その時の社会が、今より少しはマトモな人の集まりと思えるならだ。
今のところ、そんな気はさらさらしない。