見る

先に夕飯を食べ終えてぼーっといつもの「寅さん」を眺めていると妻が「若いねえ」と言った。旅に出る寅次郎をさくらが見送るシーン。まだシリーズの最初の方の回で、見る度に自分も若いと思うので「若いねえ」と言ったら、妻が「見惚れちゃダメよ」とふざけた。自分は乱視が進んでいるので、眼鏡をしてないと焦点を合わせ続けられない。ちゃんと見てみようと思い、まだ食べている妻の顔や口の動き、皿に運ぶサラダのトマトや甘栗やアボカド、こちらを窺う妻の目などに焦点を合わせてみた。やはり焦点は一時的にしか合わないが、普段よりきれいに見えた。見ようとしている自分の目も普段より目力があるんだろう。食後にひと仕事して、情報量が多い画面を見続ける。慣れているので必要なところしか見ない。目が悪くなっていくことに慣れ、疲れないように見ることに慣れている。見ることは無意識に固定されていき、意識が向くものや動く道筋も同じになりがちだ。仕事が終わって、今日は満月だったので妻と散歩する。ルーペを持ち出して目に当ててみるが、いっぱいに白い光が広がるだけだった。妻に目が悪くなるからやめろとしかられる。ルーペを持ったまましばらく散歩をする。ゴキブリ2匹と遭遇し、近年のゴキブリは弱弱しい気がするという話をする。夜の公演を回り、お化けを見たことがあるかなど話し、他の虫やヤモリなどの小動物には会わなかった。風もなく、静かな夜を見た。

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たまに夜球を投げる