蒼茫

いつもの事だがここ最近、部屋が荒れている。
先日見た夢をシナリオに起こしてみた。題は『糸』という。5つ年上の肥満の女児を「姉さん」と慕い、大人になってからも彼女の為に旅先でパフォーマンスを続ける男の話。夢で見ただけあって不気味で切実である。以前書いた『きらい』も夢で見たもので、第二次大戦後の多摩川沿いで機雷を作り続ける記憶の無い男の話だ。ぼろぼろの着物を着た男の後姿。以前も今も、気が進まず放ってある。

もうすぐ母の誕生日。弘前に帰る。両親は健在だが、父が死ぬ前に父の演技をしっかり覚えておきたいと思い、しばらく居座ろうかとも思った。母の本音も聞いておきたい。しかしである。もし帰ったとして、既に二人は好きな事に時間を使っているし、自分に教えるのは面倒だろう。親子でも一方的な押しかけは嫌なもの。「死ぬ前に持っているものを伝えてくれ」なんて、マンガみたいなセリフは言い辛い。興奮は一時のもので、すぐに父にインターネットを教えるついでにエロ動画サイトやマージャンゲームで時間を潰してしまいそうな気がする。

そんな訳で今度の数日間の帰省中は二人に激しく詰め寄ろうと思う。数日間ならいいんじゃないかとの甘えた考えである。でも「これは」というものが本当にあったら。来年東京での用事を全て済ませたら、戻って弟子入りさせてもらおう。ちなみに二人ともプロではなく、市井に埋もれる蒼茫の庶民である。金も無い。

映画の撮影が終わってからも、ずっと雨戸を外してある。やっと「がじゅまる」を室内に移した。
夏に鉢を変えて以来、あまり成長していない。なんだか可哀相だ。育て下手でごめん。親に似たのか。いつか沖縄に植えてやりたいと思う。