帰ってきた

帰省して思ったのは誰かと一緒に住む楽さと何にも考えないでいられる場所の大切さである。同じ家に誰かがいるだけで「ちゃんとしなきゃな」と思うし、一人で無駄な時間を浪費する事もない。自分を律するのが楽だ。

余計な情報が入ってこない、必要なものだけがある場所にいると、自分のやりたい事がよくわかる。田舎の場合は街に出ても情報は少なく、山や街の隙間のぽかんとした空ばかり目に入り、色々な事を思い出したりした。

レンタルビデオを置き忘れた兄の職場まで、親父とドライブした。70年代フォークやニューミュージックを聴きながら、思いつくままにぽつぽつと話をするのは楽しかった。兄の職場は青森市の外れの山の中にある施設で、なんだか忙しそうだった。

帰り道、青森県を高齢者介護の理想郷にしてはどうかと思いついた。親父が言うには既に日本の南の方で同じ事をしている町があるらしい。青森も積極的に全国の老人と介護福祉士が集まる県にしていくべきなんじゃないか。

青森は年間自殺者数で秋田県と一二位を争っている。原因は県民性ではなく、貧しいからだと思う。町で小さなお守りを配る。「どうしようもない時、これを開けてください」と書いてある。開けると中には下らないギャグが書いてある。…もしくは知らない人の写真が入っている…いや、経済面、精神面の相談先が書いてある。冗談ではなく、自分は自殺抑止の方法を考えていかなきゃならないと、唐突に思ったのだ。

久しぶりにラーメンでも食べていこうかと話し、家に電話をすると母は業務用スーパーで買った肉を解凍してるところだという。父は即座に「ウチで食おう」と言った。


帰京して昼間、新宿に帰ってきたゑびすの『ほととぎす兄弟』を観に行った。進藤さんはいい方言使いだった。今回でゑびすは休団になる。千秋楽の今日、解体の手伝いに来ていたフクさんと、帰りにすれ違った。「お前はどうするんだ」と言いたげな目で見られた気がした。