2/14(日)〜27(土)2月の庭劇場「月のルンナ」

今月はもう観劇できないと思っていたら、栲象さんから案内が来ていた。HPにもあるが、ここでもご案内。

首くくり栲象(たくぞう)はかように行為します。
●タイトル「月のルンナ」@庭劇場
2月14日(日)〜27日(土)※21日・23日・24日・25日・26日は休演
公演時間50分
料金一律千円
・2月14日(日)午後6時5分
・15日(月)午後8時5分
・16日(火)午後8時5分
・17日(水)午後8時5分
・18日(木)午後8時5分
・19日(金)午後8時5分
・20日(土)午後6時5分
・21日・休演
・22日(月)午後8時5分
・23日・休演
・24日・休演
・25日・休演
・26日・休演
・27日(土)午後6時5分
(開場は各三十分前/庭劇場は本当に庭です。雨天は雨の中になりますが開催いたします)

●能書きとして

「この世界でもっとも速い動きは電波ではない。光だ。だが光よりも早く動くのは、祈りだ。食料や医療の援助は、その祈りの後からやって来る 。まさに、かようなことを体現したひとがいる。マザー・テレサもそのお一人でしょう。

小説家の山口瞳直木賞をとった直後、山本周五郎に編集者の仲介で呼び出され、一席あづかった。話の内容は、作家たるものの心得だった。「何件も出版社を掛け持つな、一社に絞れ、そうすれば経済的にも融通が効いて、安定がえられ、小説に集中できる。かりにその一社をしくじっても、心配するな、次の朝から町内のどこかを掃除するのです、そうすれば誰か見ていて、なんらかの仕事を君に与えてくれる。」といったそうだ。その山口瞳が住んでいた国立市には三つの駅がある。その内、中央線の国立駅南武線谷保駅は互いの南口と北口で、三キロの直線の隔たりで面と向かい合っている。国立駅一橋大学の所在地でもあり開発され、賑わっている。一方谷保駅は、近くの谷保天神、初詣の人出のあとは場末な風情だ。その谷保駅の周辺を毎日清掃していた小柄で、すこしビッコをひいたおじいさんがいた。 駅の階段下に掃除道具を整頓し、一日になんどもなんども駅界隈を清掃されていた。俄か雨に濡れ、雪の日は、頭髪や衣服やごつい手に雪を積もらせ、季節を問わず嵐の日も白髪が混じった薄い髪を無防備に晒して、塵取りとホウキで車道の真ん中にも清掃してゆく。 そのおじいさんの姿が、ある日を境に忽然と消えた。
谷保駅前のマックでコーヒーを飲んでいたとき「やはりいないと寂しいね。」と老婦人の声。ややあって「 脳溢血だってよ、みよりがないし、 国の費用だから八王子でお骨にしたんだろうね。」「新潟が出身地だそうだ。」という対話が聞こえた。しばらくして、駅階段下にべつなご婦人がたが姿をみせ、卓上が設置され、白布の上に幾つかの花束と写真が飾られ、おじいさんを偲ぶ祭壇が造られた。次の日、常駐のタクシードライバーに「タクシー会社に委託されて、周辺を清掃していたのですか」と尋ねてみた。「いや、あの人はね、 自主的にやっていたのだ。」と答えが帰ってきた。
自主的に。首くくり栲象の庭も自主的な公演を続けている。
昨年の2月末の朝、思い立ち、高尾山に登りました。もどって庭に立ち、一年間の庭劇場の開催を決めた。
まず、室内に積み重ねられた物を減らすべく、行動にでた。2ヶ月間で3分の2を棄てた。ガランと、あらたまった部屋。初夏は清々しかった。冬の朝、太陽の光線が、東の窓からさんさんとふりそそぐ。陽が沈めば隙間だらけの室内に、外気よりも冷え込む冷気が満ちてくる。
1月が過ぎてはや2月、こんかいの庭劇場で丸一年間、開催していたことになる。普段も庭に立ちますが、開催の夜にまさる夜はありません。たとえ無客であっても、不思議な光沢で時がそこに臨在してくる。


暑いさなかも、寒いさなかも、客席にいらしたひとびとに感謝を申し上げねばなりません。 ありがとうござました。 2月の庭もどうぞよろしくお願いいたします。」

首くくり栲象

首くくり栲象ホームページ