犬の視点


「犬地図」というものが有るそうな。『アースダイバー』の著者、中沢新一氏が教えられているゼミのtwitterアカウント@earth_diver をフォローしていてその言葉に出会った。犬にとってポイントになるニオイが記録された地図のようだ。昔から研究はされていたようだが、杉浦康平というグラフィックデザイナーによる図案は今でも見る事が出来るかもしれない。


「嗅覚の時空領域の研究」

匂いの時系列変化
松岡正剛の千夜千冊 杉浦康平『かたち誕生』より

杉浦氏は犬地図の他にも氏にしか見えない世界をデザインに落とし込む天才だとお見受けする。著作も自分などには手に負えないとは思うが、ニオイの視覚化は非常に興味があるのでいずれ手にしたいと思う。

散歩の時のフクちゃんはニオイの収集に夢中である(ように見える)。大体同じコースを散歩していると、気になるポイントも判ってくるので楽なのだが、鼻息荒く猛烈に収集し、自分のニオイを残している。でも時折歩くペースを落として、顔を見上げてくる時がある。まるで夢から覚めたように。もしくは夢中になってみせたのは演技だったんだよとでも言うように。

もちろんニオイが彼にとって大事である事は間違いない。見上げられた後でいつもと違うルートに入るとまた猛然と収集を始める。だが一方で見上げた顔には「この人は自分にとってどういう存在なのか」と自問自答しているような風情もある。話しかけて軽く撫でるが、尻尾を振るばかりで本当のところは判らない。

手足の長さは辛うじてフクちゃんよりは長いが、胴体の長さは同じ位である。一緒に海の近くで生活でもできたら、もう少し判る事もあるだろうに。とかそんな事を考えていたら車高の低い外車が脇を通り過ぎていった。F1カーとかカートの視点の高さは、犬の視点の高さと一緒だなと思った。スピードが違うが。

ともあれ自分は最近また目が悪くなっているようで、外を歩く時、周囲は益々ぼんやりとし、大体の種類と大きさ、動きしか目に入らなくなってきた。フクちゃんと一緒にニオイを探求するのは楽しい。