冬らしい朝

目が覚めると頭は途端に未来を思い始める
今日の予定や会う人の顔などそれほど先の事ではない
そうして夢は忘れられていく


そこはフルタイムのセキュリティがついた、白くて広い部屋だった
窓の向こうには研究員か職員風情の白衣を着た者たちが幾人か動き回り
その下の階には今は誰もいない秘密の稽古場が明りに照らされているのが見えた
部屋には黒々と髪を生やした、壮年のイケメンが座っていて
治療を止めたおかげで体が若さを取り戻しているのだった
本人はまだ体があまり動かせないのか不安そうだが、
周囲は口ぐちに見た目の変化を伝えて、これからのことを思った
その部屋は彼のものであり、ギャラリーでもあるのだ


覚めても目を開けたくない、
まどろんだまま薄れゆく過去を向いていたい、そんな朝もある
でも冷気と一緒に外の様子も伝えてくる
清冽な空気に包まれている事に気付けば
さっさと出かけて見たくなり、
ふるえながらシャワーを浴びる