一人の時間


江東区三好にある東京都現代美術館の「レベッカ・ホルン展」を観に行ってきた。去年の10月からやっている。2月14日まであるので気楽に来た。偉そうだが「こう来たか〜」と思った。初めて観たのだが。その作品は触ってもいないのに触覚を刺激される。めちゃめちゃ気持ちいい。そして物凄く静かであり、響く。他の観覧者もそれぞれ作品の前で一人の世界に入り込んでいる様子だった。彼女は触覚を刺激する為に機械を使っている。その使い方が「こう来たか〜」なのだった。つまりオリジナルなものに触れた喜びである。レベッカさんの感じ方を体感しているようでとても親近感を持った。
映像作品は計画していた通りには観れず、『ダンス・パートナー』『ラ・フェルディナンダ』『バスターの寝室』と長めの作品を観る事になった。機械仕掛の作品も映像に出てくる。役者も「機械じかけみたい」と思う位役柄をスマートにシンプルに演じていた。それでいて感情が伝わってくるのだった。心地よさに人間くささをプラス。そんな映像作品であり、丁寧に作られているがどこか冷めているようでもあり、それがまた心地よく、人柄を感じさせるのだった。現代アートは身近に感じるので好きだ。作者がまだ生きているというのも良い。

阿佐ヶ谷の「駅前食堂8 1/2」でスタミナ野郎丼(豚)700円を食べる。吉祥寺の武蔵屋別館と同じメニューだったので入ってみた。味もボリュームも一緒。吉祥寺から進出したのかな。すっかり油臭くなって店を出た。用事まで時間があったのでブックオフ山本周五郎の短編集を2冊買い、ドトールで読む。明快な人情物。でも誰も真似出来ないのは江戸が舞台だから?う〜ん。よくわからん。

用事を済ませ、ラピュタ阿佐ヶ谷で『マイマイ新子と千年の魔法』を観る。午前中に整理券と入場券を買っておいたのだが、販売開始1時間で整理番号は25番であった。50席しかない映画館なんです。アンコール上映でも人気は衰えず。補助席も沢山出ていた。一人期待する。で、期待通りの映画だった。本当にこの映画はセリフが素晴らしかった!「うん」で、じん、と来た。使い方だなあ。鈴木くん(あえてこう呼ぶ)の「ベーゴマの巻き方」のくだりのセリフは最高。今思い出しても涙が出てくる。子供の激情は最高だ!素晴らしい。主役の新子はカッコ良すぎないかなあ。おじいちゃんが居てくれたからとはいえ、あんな「リッパな子供」は格好良すぎ。新子役の福田麻由子の声も子供にしては落ち着いて聞こえた。だからこそ「主役」に説得力があったし、「うん」で、じん、と来たんだけど。子供が見たら「新子すげえなあ。オレ(私)なんて…」てならないだろうか。
いずれにせよ、子供に観せたいと思わせる映画だった。ミニオトナをカッコいいと洗脳するような子供向けの番組や、商業主義にしか則っていないワンパターンのアニメとは比べものになりません。「おれ、5回目だよ」「でたー」と30過ぎのメンズが話していた。見たところ客層は18前後〜50歳弱であった。客席全体もあったかい感じだった。自分は未だに観せるべき子供がいない事をさみしく感じていた。自分が子供の頃、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』を両親と三人で観に行った時のあの感じが懐かしかった。あれはエンタメ色も強いものだったが、「いいもの観たなあ」という感覚を他でもない親と共有するという経験がどれだけ温かいものか。阿佐ヶ谷から、自転車で帰り道、「孤独に歩め 悪をなさず 求めるところは少なく 林の中の象のように」というブッダの有り難い言葉が浮かんだ。