劇場


STOUTの店番の前にフクちゃんの散歩をする。よく見ると、自分と顔が似ている気もする。散歩をしていると、小学校に併設された給食室の匂いとか、夜中だけ開いてるような店やクダを巻く酔っ払いとか、他人の生活みたいなものを感じられる事がある。ぐずって泣いている子供に「度が過ぎる!」と繰り返し言っている母親がいた。そんな思い通りにいくもんじゃないぞと思う。フクちゃんの散歩のコツというか、自分が一番スムーズにいくなと思うのはお互い押し付けあわない事。フクちゃんは他の犬や落ちているウンコやそういったものよりも場所についたニオイの解釈の方が興味があるようだ。人間としてはウンコやオシッコされると嫌な場所があり、その後の予定など時間的な制約がある。お互いの条件を関係が壊れない範囲で譲歩しあって散歩は終わる。でも散歩の後、ボール遊びをしているとかわいいなと思う。でもだいぶクサくなってきたので洗おうと思う。
(付記)子供を叱るのと犬の散歩は勿論違う事ではあるが、押し付けない方がうまくいくと思う。

夜、STOUTのオーナーに吉祥寺の武蔵でつけ麺をご馳走になる。自転車で駆けつけると既に注文されてあった。野菜など載せ載せの麺中盛。かなりのボリュームである。魚ダシが特徴的な武蔵だが、ここのはその他の甘みが強い。「その他」って何だろう。「FXの調子はどうよ」とオーナーに訊かれた。実は最近、外国為替証拠金取引と外国株式のCFD取引をやっていたのだった。前の会社に居た時に知り、辞めた後で一度大きく負けた経験がある。今回はチャートのテクニカル分析で出てくる指標を勉強したり、投資会社のディレクターなど金融関係の専門化の意見やトレーダーのつぶやきなどの情報を集めたりして、知れば知るほど面白いと思ったのだが、やっぱり止める事にした。取引はしなかったが話題の国債関連の情報から外国の財政政策に興味を持つ事ができた。リアルタイムの市場の動きは観察しているだけで面白いし、男性的だと思った。最も多くの人間が共通して興味を持てるのはお金なのだとも思った。でも為替には状況の変化しかない。参加する人間がいる限りドラマはあるだろうが、結果は数字の変化に過ぎない。自分にはそこに新しいものを見出す事はできず、その結果自分の生活が変わる事にもあまり興味がもてない事を知ったのだった。オーナーはどう思っただろうか。
帰り道、駅前の交番と客待ちのタクシーとのやり合いが面白かったので見物した。