よわいぬ

気が付くと深夜で、まだ高円寺にいて、歩いていた。アゴが痛い。鞄とiPhoneが無かった。
飲んでいた店に行ってみようと思い、とりあえず抱瓶を訪ねる。店員さんに「顔から血が出てますよ」と教えてもらう。忘れ物は無かった。うっすらとDogBerryに居たような気がして行ってみる。無かった。コンビニで洗顔シートを買って顔を拭き、高架下や仲通り商店街、住宅街の公園など自分が行きそうな辺りをうろうろ散策。気が付くと朝になっていた。
血だらけの顔で交番に行くのも面倒だし、少し寝たかったので電車で帰宅。眉間と鼻の上の方から血が出ていた。前のめりで倒れたらしい。折れてなくてよかった。ゲンちゃんに何か知らないかメールをして、フクちゃんの散歩まで寝た。
散歩をしながら、失くした物を思い出してみる。IDやキャッシュカードも大事だが、カメラを失くした事の方が萎えた。記憶が無いので、もしかしたら殴られたんだろうかと不安になる。信頼は相対的なもので、正直自分にとって一番大切なものではないが、やはり無くすのは辛い。
店を開ける。絆創膏を貼った顔でお客様を驚かせるのも申し訳ないので、大人しくしていた。ゲンちゃんから電話があり、やはり自分は転んだだけだったと安堵する。よかった。楽しかったもん。抱瓶とDogBerryで飲んで、何故かパン屋にも寄り、一家はタクシーで帰宅した。その時自分が鞄を持っていたかは不明。娘さんはまだ小学生だし、自分も飲むペースが早かったので、それほど遅くない時間にお開きになったのだろう。その後、自分はどうしたか。
@numako77さんが店に遊びにくる。飲み会の予定が流れてしまった。フクちゃんの散歩に付いてきたいというので、店を閉めた後で散歩。家の都合で動物を飼った事がないという彼女は、フクちゃんのストレートさに打たれたようだった。フクちゃんは興奮気味であった。駅で別れ、高円寺の交番に行ってみる事にした。

「有るそうです」と若いお巡りさんが言った。店で書いた遺失物届けを渡し、杉並警察署に確認してもらうと、鞄は既に届いていたのである。早速取りに向かうと、受付に用意されてあった。
鞄の中身は書類入れA4×3、B5×1、カード入れ(キャッシュカード、運転免許証、保険証など数十枚)、パスポート、デジカメ、タオル、前使ってたexlimケータイ、各種ケーブル、タオル、紹興酒リポビタンD×2、ウコン粉末、菓子パン、他文房具や印鑑など。
よくまあこれだけ落とせるものだと、受付の人も呆れ気味である。iPhone以外は全て有った。鞄が発見されたのは阿佐ヶ谷駅の高架下の自転車駐輪場付近。拾ってくれた人は名前も言わず行ってしまったそうだ。どこの方か存じませんが、有難うございます。

改めてiPhoneの遺失物届けを出し、駐輪場に向かう。恐らくゲンちゃん一家と別れた後、吉祥寺まで徒歩で帰ろうとしたのだと思う。駐輪場付近で転び、少し気絶でもしたのではないだろうか。自分の状況を忘れ、逆に高円寺に向かって歩き出してしまったのだ。鞄とiPhoneをその場に残して。
駐輪場付近をじっくり探索するも見当たらない。どこで転んだかは思い出せないが、隅々まで探す。自分の番号に電話をかけると、まだ繋がるのである。ロックが掛かっているので簡単には使えないと思うが…MobileMe入っておけばよかった(こんな話もあるし)。近くのコンビニにも届いておらず、駐輪場に電話して訊いてみようと思う。終電で帰った。

久々に高円寺を歩きまわって、やっぱり好きな街だと思った。ヤクザも多いし、精神を病んでいるような人もいるが、皆飾らずマイペースに好きな事をしてる。高架下の居酒屋はどこも一杯。老若男女入り混じっている。道でも皆酒を飲んでいる。学生の頃はまだ暗黒っぽいディープな街というイメージ。無力無善寺に被害妄想による幻聴に悩まされていた友達の歌を聴きに行ったりしていた。まだ素人の乱で古着屋を始める前のヒカルさんと話すようになったのも高円寺。会社に入ってからは昼日中の住人のディープさを知り、とても親しみ易い街になった。

自分は酒が弱い。