怪物(ネタバレあり)


映画千円の日。都民の日。夕方、井の頭自然文化園に行ったら16時で閉園だった。はな子さん、まだ一度も見てない。


三池崇史監督『13人の刺客』を観る。破綻なし、見応えあり。後半のバトルシーンはもう少しよく観たかった。あの出演者数と激しいアクションでは撮影も難しいだろうし仕方ない。平幹二朗演じる上役が、役所広司演ずる侍に、稲垣吾郎演ずる殿様の暗殺を命じる時、殿が蹂躙した娘の姿を見せる。以前百姓一揆を起こした首謀者の娘で、四肢切断の上に舌を抜かれ「なぐさみもの」とされた挙句飽きて捨てられたのである。血の涙を流しながら怨嗟の声を上げる娘を見て、侍は笑う。
娘の姿を哂ったのではなく、これまで求めていた侍としての自分の死に場所を与えられたのに、体が震えている自分を自嘲したのである。冒頭で殿様の悪逆非道ぶりを見せられ、観客は刺客達に共感していくのだが、はっきりいって娘の姿を侍に見せる必然性は無い。
だがこの過剰さが三池映画の醍醐味なのだ。過去の作品でも過剰さのあまりこれまで語ってきた作品世界をぶち壊すようなものもあり、もの凄い衝撃を受けた事がある。大笑いした。やはりそれを期待してしまう。今回はそこまでのものはなく、群像劇という事もありキャラクターも割と浅い感じだったが、それでも面白かったし楽しめた。上映後「何これ、あれは無いよな〜」とか言ってるカップルが居たが「何言っちゃってんの」と思った。

吉祥寺をぶらつきながら『悪人』と『キャタピラー』で迷う。

若松孝二監督『キャタピラー』を観る。寺島しのぶが賞を取って話題になった映画。今日は時代物はもういいかなと思ったのだが、四肢切断つながりで観る事にした。特に意味はない。
事前に「実際に怪我をして血を流しながら演じ、もの凄いテンションの中で出たアドリブ」みたいな話を読んでいたので、スクリーンで迫真の演技を堪能してやろうと思ったのだが、残念ながら演技に集中できる映画ではなかった。戦場で怪我を負い、四肢切断の上、耳が聴こえなくなり喋れなくなった夫は、時折トラウマがフラッシュバックする。戦場で女を犯すシーンや自分が倒れている様子である。
これがクドい。罪の意識や苦痛を表すにしてもあれ程何度も見せられるとウンザリした。「戦争は人間を獣にします。酷い事が沢山起こるのです」みたいな反戦的なメッセージの押し出しが強すぎて、せっかくの演技に集中出来なかったのだ。
今回は観る動機も、観たタイミングもよくなかったのだろうが楽しめなかった。

ダルマ、芋虫といった後天的に手足を失い自由を失った人間の、日常におけるもの凄い感情を観たかったのだと思う。『13人の刺客』では道具的な扱いだった。『キャタピラー』では男女のドラマを描く上での条件に過ぎなかった。役者は良かったと思う。だが自分の観たかった、変態性に焦点を当てた作品ではなかった為、半ば予想通りだったが残念な気持ちだった。

ちなみに自転車のカゴに入れてた菓子パンが映画を観てる間に消えていた。さすが新宿。

美学校の初等科で同期だったKさんから連絡あり、吉祥寺で飲む。頼まれ仕事らしいのだがKさんが監督・脚本の短編映画への出演依頼だった。よかったー。嬉しいので引き受けた。