ご縁(ネタバレあり)

「誰の身の回りにも起きているようなことの中からも、なにかきらりと光るものを拾い上げられる能力こそが、作家性」「ヤマザキマリには、自分の物語をそこに起ち上げさせる作家性があったのだ。」
作家性の元は個性だと思った。個性とは世界の捉え方でありそのフィルタ、アンテナ。

10/10は京浜ロック フェスティバル2010。またオニや原田郁子も出演。あがた森魚も。川崎かー。迷う。

前川麻子さんのブログ「仕事部屋」を読んでいて、たまに出てくる「吉岡」って誰だろうと思ってたら、『へばの』や青山さんの『春雨ワンダフル』『みかこのブルース』に出てた吉岡睦雄さんだった。モグラ町シリーズ、一度観てみねば。
ていうか観ようと思っていた夜行館は今年から津軽公演のみなのだった。そしてもう終わっているのだった。縁が、なかった。


ヘブンズ・ストーリー』を観てきた。開始時刻を勘違いして冒頭が観られなかった。少し待って『小屋丸_冬と春』にしてもよかったのだが、後ろもつまってたしなんとなく「いいすよ」と言ってしまった。2000円出したら「あと500円」と言われた。2500円です。
途中から観て感想もないと思うが、いい映画だった。陰惨な物語だけどずっと観ていたい心地良さがあった。キャラクター同士の絡み具合は映画的で、時間も場所も越えてキャラクターが作品世界に集約される感じ。運命じみた感じ。(以下ネタバレあり)
忍成修吾演じる殺人犯は家庭内暴力を振るう父親にうんざりして、母親を亡くした事をきっかけに家を出た。18歳だった。浮浪者として全国を放浪する中ずっと考えていたのは「何故母親が死んだのか」という事。結果「死は突然訪れる」という考えにとりつかれ、殺人を犯した。
殺した理由は本人にも解らないと言っていた。理不尽に母親が死んだように、自分が死をもたらす事も突然・理不尽という部分では同じだ。自分が受けたショックを他人に与えて何が悪いのか。放浪でボロボロになっていた少年の心中を自分はそう察した。
フェアじゃないと思ってしまう気持ちは共感し得るものである。一方、殺された側も強く感じるのはそれである。だからこの作品の遺族は復讐を誓う。私刑を禁じられている社会でそれを実行すると、社会的に排除される。また仮に成し遂げられたところで満足する訳ではなく、結局、幸せにはなれない。
悪人もいる。どうしようもない人もいる。理不尽な思いが溢れる社会においても、理不尽さが行動の理由としては認められない。不幸になるだけだからだと思う。
自分のした事に責任を持つ事がこの映画のメッセージの一つであり、復讐代行屋という特殊なキャラクターはそのメッセンジャーだった。これを演じる村上淳がまたよかった。いつのまにこんなカッコイイ役者さんに!とびっくりした。いやあ、よかった(そればっか)。江口のりこは子供ばかり生んでいる印象がある。そういう役多くないすか?かっこいいんだけども。

しかし自分の感性ってだいぶ鈍いなあと思った。上のみかこのブルースの感想とか見ても、あんなに細かく拾えないわ。まあちゃんとした映画のレビューは他の方にお任せして(だからカテゴリーも作らないのだ)。逆に普通より鈍い自分でも「面白かった!」という映画は、だいぶ面白い筈。