いやしくも

今度出る短編映画の顔合わせから一週間、役に合わせて生やし中のヒゲがムズムズする。ヒゲの放置に伴い鼻毛、眉毛もほったらかしで小汚い。なんだか気持ちも薄汚れてくるようで、役作りは順調である。

顔合わせ後に行った歌舞伎町のアルプスは居心地がよかった。建物が古い。ビールが安い。

数日後。WS生のお知り合いが2ヵ月前にオープンしたという荻窪の「poco a poco」へ。試験が終わったら行きましょうと約束していたのだ。カウンターのみの綺麗なお店。厨房のポコさんを一瞥、これは旨いものが出てくるぞと思った通り。酒が進み過ぎて記憶が飛び、お金も飛んだ。同じ高校出のお客さんと遭遇した。

イチジクの味は何故か覚えている。

その翌日は学校のクラスメイトと自宅で麻雀。これも約束。部屋を片付け「雀荘といえばカレー」という思い込みのもと、グリーンカレーを仕込んで出かける。鳥もも肉とたまねぎ切って炒めた他は、もろもろ缶詰とペーストで煮込むだけ。出来上がりは、大変しょっぱかった。

肝心の麻雀は予定の面子が揃わず、殆どただの飲み会。

むかしゑびすで知り合った、タカハちゃん作演出の椿組芝居公演『みちゆき』を観に行った。相当面白かった。若い男女(+つきそい)の逃避行。但し片方は死体。主演女優の安奈さんのキャラが、どストライク過ぎてドキドキした。飲み続きで開演前は吐きそうだったのを忘れた位だった。

余韻に浸りながら徒歩で帰宅。高円寺の「旅の途中」は閉まっていた。ある有力筋から「世界一美味いラーメン」と聞いている。

それから知り合いに前世を見れるという催眠をかけてもらった。誘導の仕方など勉強になる。前世の話となると何故大概人間なのかといえば、想像力によるからなのだろう。目を閉じたまま長時間、他者からの問いかけに答えていく状況は異常だ。通常でも目を閉じているだけで色々浮かぶのだから尚更である。
催眠にかかりたいと思い、質問に応えなきゃと思うとビジョンが明確になり、関連付けが強化され、キャラクターと物語が半強制的にできあがってくる。それは自然と今の自分に関連がありそうなものになるだろう。見る事に集中すると、頭だけで考えたものより意表を突いてくるので面白かった。締め切りに追われて漫画を描きあげたような感じがした。素人の感想。

暗闇で写真を撮るのも面白い。歩いて帰る。

生まれて11111(らしい)日目は吉祥寺の飲み友達が実家に帰るというので公園で飲んだ。途中フジワラさんにタバコを求められる。いつ会っても「子供の頃この池で泳いだんだからね、多摩川に60分かけて出かけるんだからね、高尾山には女も犬も沢山いるんだからね、自分には孫が6人いるんだからね。男3人女3人だからね」という話をくり返す人である。

いきつけで久々に鯨の舌を食べた。友達が自転車をくれるそうだ。


人間、何をどう思い込むかが大事と改めて思わされた一週間であった。思い込みは失敗の元だが、力にも支えにもなる人間の基本的な機能なのだろう。「飲んで食ってばっかじゃねえか」と言われればその通りである。