仕事0

近所の犬の散歩のバイトを辞め、全くの無職になった。TVをつけるとやたらと犬がメインの映画を目にして、日本とアメリカでは犬の映画が多いと思う。連休、東京は雨が止まない。冷蔵庫の食料を片付けるついでに、紙パックの焼酎を飲んでいる。

初めてバイトをしたのは小学5年生の頃の新聞配達だが、家計の足しにする必要もない小遣い稼ぎで、バイト代は全て当時流行っていたリンドバーグのアルバムCDなどに消えた。
中学高校も特に欲しいものはなく、「生活の為」という仕事らしい事をしたのはやはり大学で上京してからだった。学校では代々口コミで受け継がれているバイトがあり、例えば平和島の冷凍庫でエビの箱の詰め替えなどをした。
多分パッケージ偽装である。楽な仕事だが利益は大きく、学校を休んでは得体の知れない文字が書かれた箱をつぶしまくった。昼休みの港湾の腐った臭いが印象的だった。
他には雀荘の店員、選挙時のポスター貼り、先輩が働く店で万引きの見張りなど色々あった。「最小限の労力で最大限の収入を」が基本だ。奨学金も借りていたので、生活に困る事はなかった。


一時期ネズミーランドの夜勤をした。駐車場勤務である。夢の国は定期的に大々的なバイト募集をするのだが、暇つぶしに行ってみたらうかったのだった。面接会なのにきぐるみ達がドーナツを配っていて変なとこだなと思った。
時給1500円に惹かれて始めたものの、遠過ぎた。家を2時間前に出ても遅刻ギリギリなのだ。乗り換えも数回あり、新宿の地下道や東京駅の乗り換えホームや夢の国の道路などよく走った。
駐車場とはいえ広大な敷地だ。混雑時には夜勤務の人に混じって退園者をご案内(追い出)した。基本的には明日の入園者が車で来て、公道に出ると警察が知らせに来て、園の入口まで開放する。ネズミの誕生日などは閉園直後に一杯になるので忙しい。限定グッズが販売されるからで、開放直後は殺気立った客にひき殺されそうになった。台風の日は誰も来ないので暇だ。控え室には北斗の拳などコンビニ文庫が沢山溜まっていった。
園内には食堂やコンビニや通勤バスもあり、町だった。夜勤明けにどろどろでバスに乗ると、これから出勤の人気出し物のバイトさん達がキラキラと乗ってくるのだった。合コンなどもあったようだが、僕達は不人気NO.1だった為、よくファミレスで酒を飲んだ。当時はまだあった駅の喫煙所で初めて倒れたのもこの時だ。


駅に併設されたショッピングゾーンには僕にはとても買えないような高級ブランドショップが沢山あった。学校が無い時などシャワーを浴びた夜勤明け、ビールを飲みながらリゾート地の風景をぼーっと見ていた。土地柄なのか暴走族がよく来たが、同僚にも族あがりが何人かいて、あれそうかなあなんて思ってると実家から「何してるー?」と電話が来たりした。
「リゾートにいるよー」