夏の途中


友達と自転車を二人乗りして
後ろで本を読んでいると
なりちゃん!と呼ばれた気がして
振り向くと以前どっかで遊んだ
少年二人「遊ぼうよ」「もう夜だよ」
ずるそうな坊主頭に見覚えがある
誰だったかなあ、と自転車降りると
お祭りに向かう人の波が自転車ごと
通り過ぎていって誰もいなくなった


目が覚めて昨夜は酔ってグチを
こぼしてしまった事を思い出す
炎天下に都内の古本屋をハシゴして
汗だくになったせいか


例えば市川さんはアル中だけど
いつも穏やかで落ち着いている
僕は飲みすぎると逃走したり
感情のお漏らしが激しい


同じ事を繰り返すのは
過去の失敗を認められてないから
かもしれないと思う


今日は市川さんのライブの
最終リハで国立である
会場は遠く今日も暑いので
立川で自転車と一畳分の
い草マットを買った
巻いてカゴに入れて
夜鷹の事を考えながら
国立に向かう
身体を売る覚悟とは
やっぱりそうするしかなくならないと
持てないものかもしれない


しかし夏はペンキが似合う
何だか海の近くにいる気がするし
揮発する匂いも合っている気がする
僕は何故シンナー中毒にならなかったんだろう
脳が萎縮すると言うけどそれは幸せで満ち足りているからかもしれないのに
理由は他にやることがあるからである


尿意も消える太陽の下では
ビールがうまそうだなあと思って
飲んでもすぐに蒸発してしまう
エビスビールに煙草はわかば
市川さんの嗜好でもある


古本屋が有ったので入る
目当ての本は見つからず
でも真夏日に古本屋巡りは
クセになる気がしている


まだ時間があるので
い草マットを敷いて寝転がる
眩しい

ライブでは映像担当なので
機材が多く登山用リュックを
前後に二つ持っている
映像を走らせる事を日本語では
再生という
日本人の動画に対する姿勢が
かわいらしいし祈る気持ちも
伝わってくる


やっぱりくそ暑いので
バーミヤンでウーロンハイを飲む
休日のファミレスは出入りも多く
騒がしい


ふと子供のバッタがテーブルに来た
威嚇してまたぴょんといなくなった
あの夢で会った子供は、やはり
別の夢で遊んだ子供なんじゃないかと思う