遊び

成田さんて、遊んだりしてるんですかと
昼間に同僚に訊かれて、少し面食らった
遊ぶって何だっけ、楽しいことかと思って
超音波洗浄機に顔を突っ込んで、
皮脂を取ったりして遊んでますと答えた
後で、寝て夢をみることかなと思った


果たせる約束はまだ覚えていて
約束を果たすまでは仕事をするけど
全部終わったらどうするかって遊び倒す
こん睡状態になろうとかいうのではない


なんとなく歩いて弁当を買いにいったら
烏がおーかーかー、と鳴いていた。
1ブロック行くとまた別の烏が
おーかーかー、と鳴いていた。
何を話しているかはわからないが、
次の曲がり角でどちらに行くか迷った。
通りを渡ると、もう烏はいなかった
おっかあやーあと聞こえた
住宅街をそのまま歩いていると
視界の隅に茶色い動きがあって、
顔を向けると塀の上で子猫が息を呑んだ
人にというかすべてに慣れておらず
目を見開いて100%緊張してるらしい猫の
くくぅ、すーっという呼吸音は
ふわふわしてはかないがしっかりそこにあって
とってもいい音で誰もが破顔しただろう。
惣菜がメインの商店街の肉屋は
夜に寄ると不機嫌なおばあさんが
店員に嫌味をいったりしているのだが
ひとりの時に改めてよく見ると
北斗晶のような優しい目をしているのだった
それはどうでもいいが、僕も目に笑みを浮かべてみたら
お、という顔をして、声も優しくなった気がする
弁当を買って同じ道を戻ると子猫は同じ場所にいた
やっぱり強張ったまま、外を向いて呼吸していた
振り返ってみて、塀の上から世界を勉強しているようだった。
がじゅまるの傍で子犬の置物が小さな木を見上げていた
鉢植の時は隣の室外機の上で道路を見ていたのだが
同じアパートの誰かが場所を変えたのだろう
雨の夜に帰るとこけていたので室外機の上に戻してみた


そういう遊びをしまくるのだ