すすぎ

寝る前に腹筋と腕立て伏せとスクワットをしたのに
起きても筋肉が痛くなかった
その場でもう10回スクワットをしてから
高尾山に行こうと思った


先日髪を切ってくれた美容師さんは今月末で寿退社だ
お香の話の時、薬王院の線香はいい匂いですよと話したら
買って帰ろうかな〜父の仏壇に供えたいと言っていたし
製造元の京都の松栄堂のウェブショップには無いようだったし
美容院の客の登録シートに書いた住所が間違っていたからだ


ちょっとした仕事や家の買い物を片付けてから
電車で読む本を買おうとしたのだが
母に頼まれてアマゾンで買った
『涙のしずくに洗われて咲きいづるもの』は近くの書店になかったので
家にあった石牟礼道子さんの『苦海浄土』を持っていった


『椿の海の記』に描かれていた現実とは思えないほど
美しい土地と人々に感動して買った『苦海浄土』だが(これも母に送った)
初めて開いた時は文字が頭に入ってこなかった
水俣病が特定されるまでの状況が担当医のメモや住民達の証言のほか、
当時の漁獲量の推移や、チッソの歴史や納めていた法人税などなど
細かく日付や金額や、ともかく沢山の数字が記載されていたからだ
合間合間の水俣病患者とのエピソードやデモの様子を拾い読みしては
ぜんぜん現実逃避できねえ〜と閉じてしまっていたのだった
全く不真面目だが、そういう精神状態だったのかもしれない


今回はそんなこともなく、数字や経緯も含めて頭に入ってきた
水俣病という現象全体が、徐々に具体的になって迫ってくるようで
すばらしい記録だと思った。涙が出てきた
電車が着くと気持ちを引きずることもなくさっさと鞄にしまった


高尾山は八王子市なのだと何故か思った
うす曇りだがそれほど寒くもなく
木々の葉っぱは紅葉前のようにぼんやりしていた
ケーブルカーに乗ると中国、韓国、南米のどこかの観光客が多かった
また文庫本を開いて続きを読んだ
なるほど仙介老人の遺体を積んだ霊柩車が走り去った水俣川沿いの土手を
成人式帰りの若い女性たちが白い着物を着て賑やかにやってきたのだな
ケーブルカーは7.8分程で着き、500円くらいだった


薬王院目指してスタスタ歩き
男坂の108段の階段を「ナムイズナダイゴンゲン」と唱えながら上った
ちょっと息が切れた
幼稚園児の集団、外国人カップル、杖を両手に持ったハイキング部みたいな若者たち、
おじいちゃん、おばあちゃんの混合集団、酒臭い同年代の男たちなどがいた
お土産屋では線香は3種類あるのだが、白檀の配合されたお香は売切れだったので
家にもある普通のを2つ買って踵を返した


またケーブルカーの駅に戻ると発車まであと7.8分あった
下りは2.4km、40分ほどと案内があったので時速4km計算かと思った
時速5kmで下りたら30分で着くのだと急いだら15分で着いた
あーそろそろ暑いとマフラーを外して鞄に入れたらもう着いていた
いつも目的地のちょっと前で、無意識に手を抜いてしまうのは何故なのだろう
ケーブルカーから降りてきたのは上で見かけた人たちだった


汗を拭いて美術館で剥製の写真を撮らせてもらって
一息ついて帰る。と思ったが高尾駅ドトールでもう一息ついた
酒が飲みたい気もした。美術館には高尾山にいる動物や昆虫がコンパクトに並べられていた
モモンガをまじまじと見た
帰りの電車の中でもずっと下を向いて文庫本を読んでいたのだが
汗の引いた頭の匂いが気になった
すすぎが足りなかったと思った


帰宅してシャワーを浴び、美容院で買った炭酸シャンプーでじわじわと頭皮を揉んだ
長めにすすいで出ると今日は何も食べてないことを思い出した
いつもはデスクワークだし、久々に下りで膝に負荷をかけたので
りんごと牛乳とチーズを食べた。まだ背が伸びてほしいらしい
ブログを書く前に初めて焼酎のお湯割りを飲んだ
なんだこの変わりようはキモいな


頭を乾かして線香を持って美容院に行くと
今日は定休日でした

八王子のアオバズク