散漫

ドトールでハムサンドを咀嚼していたら急に
最近感覚を意識して生きてないとぼんやり思い
流れていたBGMに耳をすませてみた
女性の声でマイベイベエと連呼していた
仕切ガラスの水玉のグラデーション越しに客を見た
コーヒーを飲んでいる人はあまりおらず
誰も自分に関することを見ていた
急に意識したところで特に発見はないけど
作為以外のものがどうも解らなくなっていた


外に出て濡れ落ち葉を踏みながら歩く
冬の夜の空気が懐かしい歌を思い出させる
君の誇りを汚すものから君を守っていたい
虚ろな街に心が負けてしまわないように
中谷美紀が歌っていた
空っぽはただのニュートラルである
悪意に利用されなければよいと思う
心は虚ろではいてはいけないのだろうか
そんな時もあるだろうに
気付くと意識が内側に向かっている
否定癖があることに気付く


意識を緩めたり締めたりしながら
たまたま垣間見えたものを留めておくことは
まあ別に悪いことではないだろう
個人的なことではあるだろうと思う


職場の老猫を見て、人も裸で過ごしたら
猫のように空気に敏感になれるかもと思い
いやきっとすぐに風邪を引いてしまう
毛もない癖に傲慢であったと頭を下げた
老猫はイレギュラーを嫌う
未知のものへの好奇心など捨ててしまったようだ
体を温かくしていれば飽きずに過ごせる
あとはおいしいごはんと誰かいないとさみしいと思う
家猫と人間は少し似ている