みち

今、妻が出ている舞台は劇場まで自転車で行ける
迎えに行った帰り道、一緒に自転車に乗りながら
彼女に会った頃に通勤ルートを変えた事を思い出した
新しい出会いが有った時は、新しいルートを行くようにする
それで迷ったり、嫌な思いをしたら
その出会いもそんな感じかもしれないという
占いというわけではなく、ただの遊びなんだけど
気分のいい道があったら、やっぱりうまくいく気がした


今通っている事務所には空き部屋が有って
沢山の本と消耗品のストックなどが置いてある
事務所といえども、子供たちも住んでいる家なので
あまり遅くまでいることはない
たまにシッターをして仲良くなった子供が
話し始めた頃だったか、空き部屋のことを
「おばけがいる」と言った
おばけなんてどこで知ったんだろうと思ったが
つい先日同じく通いの同僚が
昼休憩でその部屋で寝ていたら金縛りにあった
「んあ!」みたいな声がした
聞くと自称霊感が強い同僚(先祖は首切り役人らしい)は
その部屋の外に続く引戸に向かっていく足をみたらしく
動線を塞ぐ形で横になっていたらしい
白っぽい子供のような、獣のような足だったそうだ
「へえー」と聞いて、霊道ってやつかねえとか話しながら
気分転換に外に出た時の事を思い出した
家の周りにはあじさいの他にも色々な草木が茂っていて
ある風の強い晴れた日に、間近に揺れる気の葉っぱを見ていた時
「ああ、このまま体がなくなったら幽霊になるんかな」と
思ったのは、その部屋の引き戸の前なのだった