「水の無い田、光る米」


このブログでもお馴染み(多分)の幡ヶ谷forestlimit米光一成×水無田気流トークバトルを観に行った。

ゲームクリエイター米光一成さんが酔った時に必ず述べることがある。
通称「米光予言」。
その内容とは、この5年以内に「オ■ネ」がなくなり「ロウド■」がなくなり「キョウソ■」がなくなる。
それが本当に実現するのだとしたらどえらいことだ。常識がひっくり返ってしまう。
そうするといままでコツコツ貯めてきた僕の大切なヘソクリはどうかしてしまうのか?
(略)
えーっ、まじで? まじでそうなっちゃうの? 
これまでの社会をまわしていた根本的なルールがここでチェンジか? 
そしたら、どうやって遊べばいいのかわからない。
わからないと不安だ! 不安はこわい! こわいのはイヤだ。
「水の無い田、光る米」特設ブログより)

という煽り文句は些かどうかとは思うが、興味があるのは間違いないので行ってみた。米光氏は先日青山さんの小説を買った電書フリマの主催者でもあり、今回のトークもその場でほぼリアルタイムに電子書籍化し、参加者に配るというこれまた世界最速の出版も体験できる。
先着30名限定だったが、客の大半は男性だった。電書フリマと客層は似てるのだろうか。鬼丸食堂によるケータリングもあって祝祭的な雰囲気もあり。ビールを持って対談が行われるソファの前の敷物に座って話を聞いた。
同化Pの飯田氏、中村氏の企画説明の後、まずは社会学者・詩人の水無田氏のトークから。米光予言の検証の下準備として、貨幣とは何か、労働とは何か、愛とは何か、予言や予言に関する過去の発言の中に出てくるキーワードを取り上げ、その成り立ちと意味の確認から入っていった。
現代社会の問題、日本社会の問題、ご自身の体験に基づく気付き等も絡めつつ、米光氏につっこみを入れていく。早口で淀みなく話される論理的な語りに感心する一方で、「ここまで真面目に対話してくれるとは…」と惚れそうになった(人妻である)。米光氏は「はあ…」「ん?」と一方的に押されている感じを醸し出しつつも、とぼけていて面白かった。
1時間後、米光氏のターン。「さっきの話を聞いていて、全部ひっくり返せるなと思った」という謎の強気発言から自身の予言について説明し始める。水無田氏は完全なツッコミ側にまわりながら、米光氏の意図を浮き彫りにし共有できるように努めておられた。お陰で予言の内容は非常に解りやすくなった。
Ust放送を入れつつも「webでは流さない。この場にいる人だけで共有する」という事ではあったが、言葉を整理し、成立する条件などを付け足せたら、公開してもいいと思う。特に「関係性の太さを表す新しい貨幣」=「ちゅ」の考えはかなり面白い。米光氏の人間性が伝わってくる素敵なアイディアである。
しかし10年前から「酔った時に」話す話という事で、理屈は覚えていないそうで、前半も水無田氏はだいぶ肩透かしを食らわされ疲弊されていた。だが「必ずそうなる」という確信はあるので、予言なのだそうだ。まさに酔っ払いの妄言ともとられかねない発言だが、正確さを期して長々と説明されていない、誤解されやすい表現であるだけで、その内容は単なる妄想とは思えなかった。
確かに自分も「いつ実現するのか」「どの社会に対しての予言なのか」が気になっていたのだが、話を聞いていると個別でそれらが検証されている訳ではなく、楽しい話として聞いていた。先を読む事。未来を想像するには、現在を観察する事が必要不可欠である。物事の本質と性質をどれだけシビアに認識できるか、その能力が問われる。
そこに「こうだったらもっとうまくいくのに」「そうなったら今あるこれはいらないよね」という願望がミックスされる。願望を抱いた頭で現在の事象を観察すると、望みに親和性の高い現象が目に付いてくる。個人の願望の筈が、多くの人に共有され得るものなのではないか?という新しい望みが生まれた時、予言は生まれた。
米光氏は傲岸不遜な人物ではない。トークの最中も、バブル世代に就職し、高い技術を持ち、所得も割と高く、安全地帯から発言している自分みたいなのを気にする発言をちょくちょくされていた。水無田氏も子供を育てながら講師として活動される中で、現実に対して強い問題意識を持ち、時にシニカルな意見を出されたりはしてはいるが、某公認会計士のように自分の理解できない人を攻撃する人ではない。疲弊しつつも理解しようと努められる姿に感動した。
質疑応答コーナーで客席からの「キスして」から突然始まったポエトリーリーディング。両者ともかなりデキる。演者としてのスキルも高いのか!と感服した。同化Pのメンバーも楽器を手に、DJ、VJとコラボして詩の世界に入っていった。水無田気流の声はまたいいんだこれが。
巻き巻きでイベント終了。笑顔が出て、一段と和やかな空気になる。追いかけるように史上最速の出版と思われるリアルタイム電書(2時間45分間でトークを速記→電書にして出す)の変換も終了し、メールで受け取った。帰り道、iPhoneで読む。あ、Luc_Leon_Lecoqのライブペインティングもよかった!マウスで描いた滲んだ感じの絵だった。
個人的な予想では、予言の全てが現実化するのは、このアニメみたいな世界よりもずっと先の未来だとは思う。

でも近々現実化しそうなものもあると思う。ともあれ面白いイベントだった。しかしforestlimitスゲエーな。