大地康雄はいい
深川通り魔殺人事件のドラマで
犯人を演じた大地康雄を
Tシャツにしたというメルマガが来た
お知らせがきた時点で大人気らしかった
作ったテロファクトリーというのは
以前阿部定のTシャツを買ったところだ
そういえばあのシャツはどこにいったんだろう
画像を見て、いいなと思った
同時に嫌悪感を覚えた
一般的に、キャラクターTシャツを着るとは
気分を着るということだ
キャラクターになったような気分や
キャラクターがいる世界にいるような気分
キャラクターの造形や意匠が面白いとかで
これ、いいでしょという気分である
一方、自分が生まれた年に起きた
深川通り魔事件について調べてみると
光景を想像して改めて嫌な気持ちになった
激情のまま起こされた犯罪や犯罪者に共感は持てない
犯人の川俣についても共感も同情もない
もし、このTシャツを着る人が
「他に売ってないから」
「実在するヤバいやつがプリントされてるから」
などの理由だけで購入するのだとしたら
余計なお世話だが、嫌だった
一般的に、いっちゃってるやつは面白い
言動が想像も理解も飛び越えているから
だが、このTシャツのモチーフになっている事件の犯人は
現実にいた人である。身勝手なその人の行動によって
ひどい目にあい、むごい人生の最後を迎えた人たちがいる
仮に創作では作り出せない独自性があるとか言われても
この男の事は絶対に認めない
では、自分は何にいいなと思ったのか
それは大地康雄の造形であり、正確には
「川俣を演じる大地康雄の表情」だった
覚醒剤でラリっているようには見えない
あくまで役者が殺人犯を演じている顔なのに
彼が仮に殺人犯だったとしても納得できる
単に大地康雄の顔がプリントされたTシャツは
きっといいなとは感じられなかっただろう
いや、それはそれでダサくていいかもしれない
言い訳がましくいいなと思った理由を書いたのは
これを買ったり着たりすることで
彼女が嫌な思いをする可能性を思ったからだ
もしかしたら、状況次第で自分も川俣のようになり得るか想像し
想像しようとする事自体が自分の足元がぐらつくような感覚を誘う
高い所でわざと身を乗り出してみる感じにも似た遊戯感覚を味わうために
あれを着たいという人もいるかもしれない
でも他人に嫌な思いをさせてまでする事ではない
力は強いものが持つイメージがあるが
現実では自分は格闘家として生きてるわけでもないし
今のところ世間にも追剥ぎなどはないようだし
自分は電車で痴漢に遭うこともないので
フィジカルの強さにこわいと思うことはない
自分に関係がないからだ
でもメンタルは弱いやつの方がこわい
彼らの弱さゆえの身勝手な自己正当化の末に
自分もひどい目に遭わされるんじゃないか
というこわさがある
誰も見てないところや
誰にも咎められないところ(や彼らの頭の中)で
自分の思い通りになる相手を
めちゃくちゃにしてやろうというメンタルも
弱さゆえのものだろうからこわい
そこに彼らを追い込む理由が
改善されてないままなのもこわい
そうか今の日本に住んでいると
弱いものが一番こわいんだと思い
自分も大して強くない気はするけど嫌だなあ
でもやっぱり大地康雄はいいなあと
改めて見に行ったら販売終了していた
『僕らの七日間戦争』や『マルサの女』などで観ていた大地康雄
両親は沖縄出身らしい。やっぱりいい顔をしていると思う
自分が子供の頃は「気持ち悪い大人だなあ(失礼)」と
思っていたのに、こんなにいいとか言うなんて
自分も気持ち悪い大人になってきたのかもしれない