備忘録

可能性

ある晴れた休みの日、妻と電車で柴又に出かけた 家ではテレビ代わりにNetflixを流していることが多く 最近は「寅さん」全48話を、BGMのように流していた 平日の午後の柴又は、記念館が休みということもあり 人出も丁度よくのんびり歩けた 帝釈天前の参道には…

悲しいキンカン

すーちゃんの火葬から2週間、 死亡から3週間経つ間には 思いがけない動揺と発見があった 動揺は近しい人との間で嵐になり 発見は嵐で傷ついた舟を直しながら得た 自分が今見ているものが何なのか すぐには認識できない、そういう経験だった 可能性の有無に人…

連日

娘が死んでからも妻の両親と職場の人、その他大勢と会っている 最寄りのコンビニで、身重の妻を見知った店員にも会っている 一方妻は入院中の病院という閉鎖的な場所でも、 自分の両親と見舞いに来た親しい友人、別の患者等と会っている ここ数カ月で知り合…

すーちゃん

娘はこちらに出てきて、14時間で亡くなった。 脳や骨は問題なく出来上がっていたが、 横隔膜ヘルニアによる胸側臓器の圧迫で 心臓や肺の状態は予想以上に厳しかった。 相当に、本当に頑張ってくれたなあと思う 娘を見た人はきれいだ、かわいいと言ってくれた…

10日余り

娘の出産予定日が早まり、29日になった 彼女は横隔膜に穴が開いていて 臓器が行ったり来たりしているので 生まれてすぐ手術が待っている 横隔膜ヘルニアと呼ばれる、その状態のため 心肺や腎臓や食道や色んな内臓の障害も 生まれてみないとわからないのだっ…

遊び

つまらなくなってる時は、ご褒美が足りてない 欲望は生きる動機になり 肉体は欲望を生む原因であり 生きるということは 残り時間をいかに気持ちよく過ごせるか 自分に課すゲームでもあるのだろう 起きている間、時間があればスマホを見て ずっとご褒美を探し…

ごう

わかってると思われたいというより わかってないと思われたくないから 墓穴は深くなっていくのかもしれない ブルーハーブの路上という曲は 業から逃げられなかった男の物語である 男に感情移入してみると面白いけど 普遍的な業というものにはどうも真実味が…

備忘録

忘れる為に書く訳ではなくても 書き残したところで忘れてしまうので 忘れたくない事は繰り返し、思い出すか 想像するしかない 最近ひとつ忘れていたことがあった 夜、自転車に乗っていて 家に帰る途中で浮かんだ 想像するとワクワクするような それは造形だ…

イベント

座・高円寺2での舞踏公演が終わって 年内のイベントは結婚式だけになった。 今年舞台に関わったのは 映像1回、チラシ作成1回 照明2回、舞台監督1回 照明は即興で遊ばせてもらい 舞台監督は家族の兄気分を味わった 妻の共演者とよく飲んだ。 舞台以外では入…

散漫

ドトールでハムサンドを咀嚼していたら急に 最近感覚を意識して生きてないとぼんやり思い 流れていたBGMに耳をすませてみた 女性の声でマイベイベエと連呼していた 仕切ガラスの水玉のグラデーション越しに客を見た コーヒーを飲んでいる人はあまりおらず 誰…

男子

若い頃は嫌なことを代わりにするのが嫌じゃなければ いつでもどこでもやっていけると思っていたのだ 嫌なことの中でもいつの世にもあって、 最も忌み嫌われることを代行していけば良いと 選んでもうまくいかないかもしれないが 選ばなきゃいけないのが生き物…

我々の舟

人生を川下りに見立てたり 他人との付き合い方を、道路交通に寄せたりしている 環境とか経験とかで人は偏るのだから 偏ってるということを知っていればいいのだと思っている 所有すること、維持することが苦手である 偶然とか、変化とか、発見は好ましく思う…

いき、いかれ

我々は劇的な人間が好きらしい または劇的な瞬間に興味があるらしい 劇的とはなんぞや 関係が 在り方が 人間が、変わる 決定的な 致命的な 取り返しのつかない なにかそんな事が起こると劇的である ベルリンの壁崩壊である 3.11である タランティーノは、監…

沖縄旅行2

8/31 フェリー乗り場にレンタカーを停め りかさんの倍速ガイドで市場など見る 美味しいシュークリームを買い フェリーで波照間島へ向かった なんとなく室外の席に乗ってしまい 貨物物資やガイドさんと一緒に 一時間ですっかり汗まみれになった迎えに来た民宿…

戒め

マジシャンが指を鳴らすと時間が飛ぶ 嘘に対して嘘をつけばいいだけだと言う 人の意識は現実ではなく嘘なので 手を加えるのも容易いということらしい 目が覚めて、記憶が消える前に、なるほどと思う 日常生活のひとつひとつ 二人で何かすることが楽しい 二度…

沖縄旅行1

8/29〜9/2に彼女と沖縄へ行った。 6/29に入籍したので新婚旅行ということになる さっき久しぶりに言った古着屋で「髪切ったんですね」と言われ 沖縄に行った話をした。 りかさん含む色んな生き物に会ったし色んなものを見たし 書ききれないけど書かないと忘…

金嫌い

金は信頼を表すものだという 他人に評価され認められることは 社会で生きていくために必要だと言われている 他人に認められ続けると、信頼が生まれる 信頼を表すものとして、金が集まるのだと でも一人では生きていけなくても ルールを知っていれば社会に紛…

まだら雨

入籍からひと月経った頃、鬱々としていた。 彼女は入籍してすぐに京都へ行き、 知り合いの家に下宿しながら芝居を作っていた。 僕は入籍祝の品や言葉にお礼しなきゃの思いに駆られたり、 また他にやる事もあるのだが、大体家で寝転んでいた。 人の作品で笑う…

勝負

ものごとを決める時には ひとつひとつ整理して、 それぞれ理解していくとよい。 単純な答えが見えてくる。 ただのイメージで判断する事を、 安易な選択という。 洗面所で髭を抜いていると笑い声が聞こえた。 テレビのお笑い番組がツボに入ったらしい、 隣の…

役割と先行き(仮)

顔真似をするアンドロイドはカメラで持ち主の表情を認識、対応する表情モジュールを動かすのだが、タイムラグに退屈してしまう缶チューハイを2本飲んで、明日の弁当を作る 野菜の煮物と、鶏肉とネギの柚子胡椒炒め 久々の炊事で、炊飯器も久々に鳴る。シャワ…

におい

羊を食べて「人の味がする」と彼女は言った 食べたことはないが、わかる気がした 羊の風味はどこか人の体臭に近いようだ 春も終わると夜の森は緑の匂いが強い これを嗅ぐと気持ちがうごうごする 生殖の匂いは、動物も植物も似ている 嗅覚からの刺激は人を動…

かえりたまえ

家への帰途がわからなくなった日の夜、久しぶりに夢を見た 今まで会った人たちが沢山登場してくる 全体としては舞台であり、映画であるような夢だった 父の臨終シーンも劇的で大変よろしかった 楽しそうに演技をして死んでいった 最後の方は、彼女と僕は映像…

続けかた

職場でその時だけの事をしていては 絶対にうまくいかない 前後の事を考えての その時なのだと言われて 今までそんな事考えてなかったと思った その時にはその時だけの事をしていて どれだけその時に注げるか それを繰り返すのが生きるという事だと 思ってい…

きょとん

彼女の公演が終わった 本番前は稽古漬けの日々で 稽古以外の時間もしっかり楽しんでいた すごいなあと思った でも彼女が好きな芝居を作る時間に 一緒にいられなくて悔しいと 酒に酔った時に言ってしまった 「私の中に君がいるから大丈夫」と言われた きょと…

わからない理由

冷蔵庫のお茶の蓋が少し開いていて 庫内が濡れていたので 野菜を拭き、ラップで包んだ。 人参、じゃがいも、玉ねぎなどが ひとつひとつ包まれて並んでいるのを見て、 お茶をこぼした事を誰にも言わなければ どう思われるだろうと思った。 誰かと一緒にいると…

酒を飲まない

目覚まし3つで起きれなかったのが地味にショックで 久々の休肝日を過ごし、起きた翌日は生きるのが簡単だった 考えたり仕事したりするのがいつもより簡単だったということだ その日はそれしかしてないということだ 膝枕をしながら彼女のお母さんが書いた短…

個人体験

法律は普遍的なものの集合で、殺人は究極の個人体験である 法律という網で殺人という個人体験を掬うと抜け落ちるものがあり、 抜け落ちたものの中に殺人の本質がある それは生理感覚や皮膚感覚、情緒を通してでないと見えない 山上たつひこ原作・いがらしみ…

こないだ

ふとワイヨリカと浮かんだので検索すると、草原の民という意味の造語で、2013年に解散した日本の2人組音楽グループだった。YouTubeで曲を聴いても聞き憶えはなく、そういえばと「あふりらんぽ」と打って出た曲のタイトルに【祝再結成】と有るのだった。 http…

仲間

堂々と貧乏暮らしを楽しみたいというか 金を必要以上は稼がずに、満足して暮らしていきたい 自分には与り知らぬ理由で起こる出来事に面した時 面白がれる余裕があったらいいなと思う そうして生きていく為には 自分が受け入れられる価値観を持った、違う人た…

不細工

今日はなんだか苛々が目についた 同じ状態にあるものが目に入るのなら 自分が苛々しているということだ 家に帰ると片耳にあたる眼鏡の蔓に 血小板の塊がこびりついていた ずっと痛かったんだぜ きっとこないだ調整してもらった翌日 寝ぼけて踏んづけたからだ…